本年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震で、当センターの加速器は大きな 被害を受けました。300 MeV 電子線形加速器および 1.2 GeV 電子シンクロトロン (ストレッチャー・ブースタリング)の被災状況の調査には時間を要しましたが、 一定の調査結果を得ましたので、これをお伝えするとともに今後の見通しについて お知らせ致します。
被害調査が進むにつれて当初予想した懸念が残念ながら次々に現実のものとなって しまいました。就中、建設から40年以上を経た電子線形加速器の状況は深刻です。 外部ユーザーのための共同利用が行われていたため、電子線形加速器は震災の瞬間は 運転中であり、この状況が事態を悪化させました。直ちにビームを止めましたが、すぐ に停電となり全ての制御が不可能となりました。被災状況としては、まず冷却水システムが至る所で水漏れを起こし、冷却用純水タンクは空になっていました。電子線形 加速器の高エネルギー部では大電力 RF 伝送用真空導波管に複数箇所で亀裂が入り、 これによる修復不可能な真空漏れが判明しました。また加速器本体にも複数の深刻な真空漏れ箇所が見つかり、真空悪化による加速管の銅製空洞内壁の酸化の度合いが大きな問題となっています。これら加速器の被害箇所全てを修復することは絶望的だと言わざるを得ません。電子シンクロトロンでは、コンクリートシールドが激突した跡もあり、加速器の電磁石は再アラインメントの必要があります。また、シンクロトロンの大型電磁石電源やパルス電磁石電源が重故障しています。
当センターにおける最近の共同利用実験で使われているビームは、
1)低エネルギー大電流電子ビーム、
2)1.2 GeVシンクロトロンの周回電子ビームによる制動放射光子ビーム、
3)制動放射光子から得られる検出器テスト用電子・陽電子ビーム
です。これらのビームの供給のために、300 MeV 電子線形加速器は2つの役割を果たしていました。一つは、低エネ ルギー大電流電子ビームを供給することであり、もう一つは 1.2 GeV 電子シンクロトロンに電子ビームを入射することでした。限られた復旧予算で、これら利用頻度の高いビームを供する機能の早期回復を目指し、次のような加速器復旧計画を進めています。まず 300 MeV 電子線形加速器の2つの機能を分離し、比較的被害が小さかった低エネルギー部の早期復旧を目指す。一方で、シンクロトロンに電子ビームを入射するための小型の入射器を新たに導入するという計画です。この計画では、入射電子のエネルギーが以前よりもだいぶ低くなるのでシンクロトロンの改良も行う必要があります。
現在のところ、電子線形加速器低エネルギー部による大強度電子ビームライン (RI 実験用) は平成 23 年内の復旧を目指して作業に取り組んでいます。また、1.2 GeV 電子シンクロトロンは平成 24 年度中の運転再開を目指しております。利用者の皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解とご協力をよろしくお願いします。なお検出器テスト用陽電子ビームに関しては、大阪大学核物理研究センターの協力を得て、SPring-8 レーザー電子光 (LEPS) 施設で同等な実験が可能かどうかを検討しております。これに関しては 8 月上旬をめどに利用者に別途案内します。
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